金環日食


5月21日は、日本では25年ぶり、京都では実に282年ぶり(!)という金環日食が観察されました。

2012年なんて想像もつかない未来だった70年代、まだ小さな子供だった私にはお気に入りの科学図鑑がありました。とくに好きで繰り返し読んだのは宇宙と太陽系のページで、日食を紹介したページの片隅にはオレンジ色の輪っかとともに「金環蝕 (本州では2012年に観測できる)」という至ってシンプルな説明が添えられていました。同じように太陽と月と地球が一直線に並ぶのだろうに、何が違って皆既日食になったり金環日食になったりするのか、また金環日食のときも皆既日食のようにあたりが真っ暗になり星空が見えるのか、ろくに説明を与えてくれないぶっきらぼうな図鑑のお陰であれこれと想像して楽しんでいたのをよく覚えています。

2012年5月21日の京都の朝は、心配されていた雲も少なく、日食の観測にはとても良い条件になりました。
70年代には想像もつかなかったことですが、今はスマートフォンのGPS機能とAR機能を使って、カメラ部分を空にかざすと太陽の軌道やどの時点でどんな風になるのか、更にはリアルタイムで現在の太陽の位置と形を表示してくれるようなアプリケーションが存在します。(ちなみにニンテンドーDSには夜空に向けると見えている星座を教えてくれるソフトがあります。)

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6時30分すぎ。右上のほうから欠けはじめています。

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ARアプリではこんな風に教えてくれます。

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7時を過ぎると、三日月のようになってきました。

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スマートフォンに日食グラスをかけるとこんな風に見えます。太陽マークのすぐ右下の白い光が実際の太陽です。精度が高いですね。

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さあ、いよいよ始まります。

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日食グラスをかけるのを忘れないで。

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金環日食です!約30秒続きました。

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金環日食中の風景。写真ではわかりづらいのですが、日が照っており影もちゃんとあるのに薄暗くてとても神秘的です。考えようによっては、太陽のほとんどが欠けているのにこんなに明るいというのもビックリです。

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皆既日食が終わりました。だんだんいつもの太陽に戻って行きます。

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次に日本でこの規模の金環日食が見られるのは、300年後なのだとか。

ちなみに今年の6月6日の7:00~14:00ごろには金星が太陽を横切るという、とても珍しい現象が日本で観測できるそうです。
これは金環日食以上にレアな現象らしいですので、手元に日食グラスのある方は6月までなくさないように持っておくと良いのではないでしょうか。

# by yamawaki2527 | 2012-05-22 18:31 | 京都の話題  

医院名称変更のお知らせ


開院より27年間、四条烏丸で「山脇矯正歯科」として診療を行ってまいりましたが、2012年1月1日より医院名称を「あおい矯正歯科」と変更いたしました。

診療体制・スタッフとも変更はございませんが、旧院長 山脇裕が理事長として、旧副院長 本田領が院長・理事として就任いたします。

今後もより良質な医療サービスを提供できますよう努めてまいります。
よろしくお願い致します。

# by yamawaki2527 | 2012-01-01 21:27 | 診療所からのお知らせ  

京都音楽博覧会 2011


秋のはじめのある日、今年も梅小路公園で「京都音楽博覧会」が開催されました。
京都出身のバンド「くるり」が主催するこのイベントでは、毎年多数のアーティストが参加します。
主催の「くるり」をはじめ、今年は細野晴臣さん、小田和正さん、石川さゆりさん、斉藤和義さん、マイア・ヒラサワさん、フジファブリック、10-feetのメンバーが出演しました。

前回ブログでご紹介した吉田省念さんは、あの後くるりの正式メンバー(!)として加入される運びとなりました。細野晴臣さん、吉田省念さん、くるりのメンバーが共演するシーンもあり、みんな大好きな私にとっては感無量の光景でした。
細野さんは他にも、小田和正さん・くるりのメンバーとともに代表曲「風をあつめて」を、高田漣さんとともに「恋は桃色」を演奏されました。

どこまでも高く澄み渡った青空に、特別な思い入れのある楽曲群が響き渡る映像はあまりに強烈で、普段忘れっぽい私ですがこの日の事はきっと一生忘れないのだろうなぁと思いました。

独り善がりなコメントはこのぐらいにします。
2011年京都音楽博覧会の様子は、来る11月7日25時5分よりNHK総合で放送されます。
是非是非、チェックして下さいね。

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# by yamawaki2527 | 2011-11-06 23:34 | 京都の話題  

歯並びと遺伝子疾患 (日本矯正歯科学会@名古屋)


今年の日本矯正歯科学会は名古屋国際会議場で開催されました。
名古屋国際会議場と言えば、この立派な像がお出迎えです。以前にも当ブログで登場したことがありますね。

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今年は開催期間が4日間と長く、たくさんの講演・発表が行われました。
中でも個人的に興味深かったのは、教育講演として行われた遺伝子疾患についての2演題でした。

人間の体を構成するために用意された遺伝子情報は、わずか2万程度(21787)であることが知られています。これは人間の体の複雑さからすると、信じられないぐらいコンパクトな情報量です。
1つの遺伝子情報は平均3000の塩基対から構成されているそうですから、コンピューターで馴染みの情報単位に換算すると、21,787×3,000×2bit=15.6Mbyte(16進法表記)となります。
GB(ギガバイト)ではありませんよ!たったの16メガバイト弱なんです。

これは、安いものだと数百円で売られている2GB(10進法表記)のSDカードなら、約119人分の遺伝情報が収録出来てしまう計算です。
音楽CDは640MB(10進法表記)ですから、39人分に相当します。
64GBのiPhone4Sなら空き容量は約57GB(16進法表記)ですから、なんと3741人分が入ってしまいます。
(補足:人間の塩基対は全部で約30億対あるため、これをコンピューター風に表現すると約715.3Mbyteです。実際に遺伝情報が載っているのは15.6Mbyteですから、遺伝情報として使用されている領域は全塩基対のわずか3%以下ということになります。)

たったこれだけの情報量で体の構成をすべて網羅するには、とてつもないデータ圧縮が必要です。
私たちがコンピュータープログラムの圧縮などで使う可逆圧縮(完全に元通りに復元できる圧縮方法)では、とてもこんなに小さくすることはできません。
音楽や写真、映像などの分野で使われている非可逆圧縮(人間にはほとんど元通りに見えるが、実際にはいくらか情報を端折っている)では、離散コサイン変換というかなり能率の良い武器が使えるため、元の10分の1以下に圧縮することができます。ウォークマンもDVDも地デジも、みんなこの方法の仲間を使用しています。しかしこれでも遺伝情報の圧縮能率には到底かないません。

じゃあ、遺伝子はどんなトリックを使っているのかと言うと、実は1つの遺伝子が1回だけ使用されるのではなく、様々な場所で何度も使いまわしをされているのです。
例えば、歯や歯肉、唇などを形づくる遺伝子は、脳神経や手足、血球などを作るときにも使用されています。
これは我々が実用化している圧縮技術とはまったく異なるもので、あえて言うならばフラクタル圧縮がイメージ的に近いものだと思います。(もちろん現存するフラクタル圧縮方法で同等のものは無いと思います。)

やっと本題に入りますが、矯正治療の対象となる口腔組織やその機能は、多数の遺伝子の作用によって複雑に形成されるため、遺伝子のトラブルによる影響を受けやすい領域であることが分かっています。
例えば、ある特定の遺伝子疾患と診断されないような軽度の遺伝子欠損が存在する場合でも、歯並びや歯根の形態に影響を与える可能性があります。
このことは常識的に考えられている遺伝子疾患の頻度よりもずっと高い確率で非典型的な症例が存在することを意味しています。そのため、すべての患者さんに対して通常は見られないような歯根吸収が生じていないか、歯周組織の脆弱性がないか、その他あらゆる非典型的な振る舞いがないかについて、治療中も経過をよく確認することが重要だと考えています。

なお学会の講演では、遺伝子検査の最前線(試験段階のもの)や、歯科との協力体制等について紹介されました。

歯並びと遺伝子疾患 (日本矯正歯科学会@名古屋)_c0193833_103068.jpg

さて、今回の学会では発表の撮影が禁止されていたため、代わりに名古屋市内某ホテルのロビーで撮ったこんな写真を。ホンダがF1に参戦していたときのマシンです(99年型BAR001に07年型RA108のペイントをしたもの)。
これを見ていると、もし佐藤琢磨があのままホンダに乗れていたら、そしてホンダの撤退があと1年遅かったら・・・などなど、日本人として色々と複雑な気持ちになってしまいました。

今のF1マシンに目が慣れていると、99年当時のマシンは非常にシンプルな形状に見えてしまいます。
現在のF1マシンは技術や理論があまりに高度で、どのパーツがどこでどんな空力作用を与えるのか、まったく想像もつかなくなっています。
もはや遺伝子レベルです。

# by yamawaki2527 | 2011-11-04 01:25 | ちょっとアカデミックな話  

ギッター・コレクション展 @京都文化博物館


アメリカ・ニューオリンズの眼科医カートギッターさんは、日本画の蒐集家として知られています。
そんなギッターさんの江戸絵画コレクションが、9月3日~10月16日まで京都文化博物館で展示されています。
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ギッターさんは60年代のはじめに九州の米軍で医師として従事し、そのころから日本美術に興味を持つようになったそうです。
以降こつこつとコレクションを増やし、ついにはアメリカや日本で展覧会が開かれるほどになりました。

というわけで早速、京都へやって来たギッター・コレクション展を観てまいりました。

素晴らしい作品がたくさんあったのはもちろんですが、とくに興味深かったのは、厳密にはプロの画家が描いた作品ではない「禅画」や、あるいは近年になって人気が高まった伊藤若冲の作品など、日本国内ではやや見過ごされがちだった分野の作品も充実しているということでした。

おそらく、先入観を持たず興味の赴くままに作品を集めた結果、俵屋宗達から仙厓義梵までをラインナップする素晴らしい江戸絵画コレクションが作られたのだろうと思います。伊藤若冲が再評価されるようになったきっかけの1つはジョー・プライスさんのコレクションでしたが、この展覧会の作品群からも負けないぐらいの魅力が溢れています。

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こちらは神坂雪佳の輪舞図(の一部)。描かれている人がそれぞれ異なるポーズをしていますね。踊る人の個性のようにも見えますし、順番に眺めていくと絵が踊り出すような不思議な感覚を味わうこともできます。

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実に楽しげな表情です。見ている私たちの頬も緩みそうですね。

ギッター・コレクション展 @京都文化博物館_c0193833_11265438.jpgこちらは中原南天棒の托鉢僧行列図です。

僧侶が托鉢にやって来る様子をまるで連続写真のように描いた作品です。
僧侶の行列を描いたのだという説もあるようですが、先頭と最後尾以外は大きく端折って描かれてますので、連続写真?説を支持したいです。

それにしてもキュートな作品です。

この作品は双幅となっており、托鉢から帰っていく様子を描いた作品も展示されています。


京都文化博物館は四条高倉から北に歩いて10分少々です。
みなさんも診察の帰りに是非ご覧ください。

# by yamawaki2527 | 2011-09-16 11:41 | 京都の話題