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歯科学会の役割

歯科の分野における学会は、基礎研究の成果や治療方法の妥当性を科学的に検証・検討して、得られた知識を皆で共有することを目的としています。

学会で主に扱うのは学術(原著)論文、症例報告の2種類です。
学術論文のうち新規の事実を報告しているものをとくに原著論文と呼びます。原著論文では、たとえばAという疾患の方たちにBという治療法が有効かどうか、といった事を科学的に検証します。

ここでいう「科学的な検証」とは、数学の統計的手法を正しく適用することで、論文の内容がどれだけ一般的(誰にとっても正しい客観的な情報)であるのかを確認するということを指します。

たとえば、ある1人の患者さんに対してこのような治療法を行ったところ、このような結果を得ました、という報告は当事者にとっては真実でも他の人にとってはあまり役にたたない情報なのです。
疾患の種類によっても治療の効果は違うでしょうし、年齢や症状によっても違うこともありますし、ひょっとしたら偶然そうなっただけなのかも知れません。「どんな場合においてそれが正しい話なのか」を検証する必要があるのです。

そのためには前提条件を正しく明示し、その条件に合致する被験者を少なくとも数十人以上、可能なら200人以上集めて、統計学的検定を行う必要があります。このようにして初めて論文の内容が「どんな場合において」「どれだけの確率で正しい話なのか」を示すことができるのです。

ここまで読まれて、せっかく証明するのなら確率の話じゃなくてきっちり白黒つけたらいいじゃないか、と思われるかも知れません。
そうしたいのはやまやまですが、どれだけ正確な研究をしても、またどんな方法を用いたとしても、論文の内容が正しいことを完全に証明することはできません。何パーセントの確率で論文の結論が誤りである、という数字を出すのが精いっぱいなのです。

これは医学や数学が未熟だからそうなるのではなく、数学が持つ性質そのものに起因するため、医学の分野では「絶対」を保障することは不可能です。過去から未来までの全人類を被験者としてデータを採ることができたとしたら理論上は100%の証明が出来るのですが、そんな事は不可能ですよね?
数学は人間が使える道具の中では間違いなく最強の道具ですが、それでも限界はあるのです。

医学の学術論文では「95%以上の確率で正しい」ことをおおよその基準として設定しています。それでも掲載されている論文の20本に1本程度は誤りであることになりますが、これが我々の入手し得る最も正確な情報となります。

たいへん稀な症例では被験者の数を多くすることが困難な場合があります。そのような時は「症例報告」という形で発表を行います。症例の内容や治療法を詳細に記載することである程度の客観性を持たせることは出来ますが、原著論文のように正確さを検討することはできません。

私たちが治療や診断についての正しい知識を得ようとする場合は、まず学術論文を検索して読むことになります。

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by yamawaki2527 | 2009-02-07 22:05 | ちょっとアカデミックな話  

ちょっとアカデミックな話

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by yamawaki2527 | 2009-02-01 12:49 | ちょっとアカデミックな話