カテゴリ:矯正治療の話( 7 )

 

歯科検診と「かみあわせ」のチェック


5~6月は、京都では学校歯科検診の行われることが多い時期です。歯科検診で「虫歯があります」という報告書を貰われたことのある方は多いと思います。

検診は「スクリーニング」と呼ばれますが、これは多少でも疑わしければ「病院に行ってください」とお手紙を渡すことで、治療が必要な人を漏れなくピックアップすることが目的です。
ですから、病院で診てもらって下さいとのお手紙をもらっても、実際病院に行ってみると「とくに治療の必要はありません」と言われることもあります。

虫歯の確認については、このスクリーニングが有効に働いていると思いますが、歯科検診のチェック項目のひとつ「かみあわせの異常」については、現状は十分なスクリーニングがなされていないと感じます。
虫歯については、歯科医であれば誰でも判別がつくのですが、矯正治療については、矯正を専門に行っている歯科医師でないと、どのぐらいの問題があれば治療すべきなのか、適切に判断することは難しいです。そのため、実際には治療を行ったほうが良い人や、治療を受けることのメリットが大きい人でも、結構な割合の方が見過ごされているように感じます。

虫歯は近年では減少傾向となっていますが、叢生(歯並びのがたがた)などの咬合異常は増加傾向が見られるという報告があります。

歯ならびで気になることがあれば、一度お近くの専門医で問題がないか診てもらうことをお勧めします。

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by yamawaki2527 | 2010-06-11 11:12 | 矯正治療の話  

リテーナーの話


今回は矯正治療終了後に使っていただくリテーナーという装置についてお話します。

ワイヤーで歯を動かして、いい咬み合わせになっても、装置をはずした後そのままにしておくと歯は元の位置に戻ろうと動き出します。
実は歯は元の位置を覚えているのです。正確には歯の移動に伴ってまわりの組織も再編成されるのですが、それには少し時間がかかります。その間歯は非常に不安定な状態です。
さらに舌や頬などの軟組織の力や咬む力が常にかかりますのでどうしても歯は動きやすくなります。

そのため固定式装置を外した日にリテーナーという取り外し式の装置をお渡ししています。

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当院では装置を外してから約1年は食事と歯ブラシ以外の間、それ以降は半日さらに就寝時と使用時間は徐々に短くなりますが、極力長い期間のご使用をお願いしています。

また、成長が続いている方や萌出スペースの足りない親知らずや舌癖のある方にはこの装置はさらに重要です。

みなさん、美しい歯並びを保ってくださいね。

by yamawaki2527 | 2009-09-22 16:40 | 矯正治療の話  

矯正装置 リンガルブラケットとは


前回お話したマルチブラケット装置は、永久歯の本格的な矯正治療では欠かすことの出来ない大変重要なものです。

c0193833_21174547.jpgマルチブラケット装置の中には、歯の裏側から付けることを前提として設計されたものがあり、これをリンガルブラケットと呼びます。

リンガルブラケットは舌側矯正で用いられます。舌側矯正は見えない矯正、裏側矯正とも呼ばれます。


c0193833_21183187.jpgリンガルブラケットの最大の利点は、歯の裏側に付けるため外からほとんど見えないということです。
歯の表側から装着するブラケットも近年非常に進化しており、以前のものと比べると本当に目立ちにくくなっていますが、リンガルブラケットはそもそも「見えない」訳ですから、この点に限ってはリンガルブラケットが圧倒的に有利です。

またリンガルブラケットの仕組みは基本的にマルチブラケット装置そのものですから、歯をコントロールする性能も十分に備えています。


一方でリンガルブラケットは表側のブラケットと比べて治療に要するコストが大きくなるという欠点があります。
リンガルブラケットを装着する「歯の裏側」はでこぼこしており、その形状も人によって異なります。そのためリンガルブラケットを使用する場合は歯の印象(いわゆる「歯型」)をとって、装置をオーダーメイドないしはカスタマイズする必要があります。

少し専門的な話になりますが、歯の表側に付ける通常のマルチブラケットと比較して、リンガルブラケットではブラケットどうしの距離が短く矯正線の機械的性能を発揮しにくいという特徴があります。このため歯を正しい場所へスムーズに移動させるためには装置に対してより多くの調整が必要となり、1回あたりの診療時間が長くなる傾向があります。

また、リンガルブラケットは舌と触れやすいため、少し喋りにくく感じられる場合があります。影響には個人差がありますが、仕事で人と話す時間が多い方は注意が必要です。

もっともリンガルブラケットは年々進化していて、以前のものと比べると舌に対する違和感も少なくなり、歯の移動もスムーズに行えるように改良されています。
今後も装置のさらなる改良と治療法の研究が期待されます。


※ちなみに、「リンガル」とは「舌の」という意味です。
「バイリンガル」も同じ語源を持ちます。

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by yamawaki2527 | 2009-04-19 21:35 | 矯正治療の話  

矯正装置 マルチブラケットとは


c0193833_1220312.jpg歯列矯正で用いる器具や装置には、多くの種類があります。
中でも一番メジャーで、永久歯(大人の歯)の歯並び治療には欠かせない装置が今回ご紹介するマルチブラケット装置(multi bracket appliance)です。

マルチブラケット装置はアメリカの矯正医Angleによって考案され、1920年代の終わりに発表されました。当時の装置名は「edgewise appliance」というものでした。

c0193833_12314335.jpgマルチブラケット装置は矯正線(アーチワイヤー)とペアで使用され、ブラケットの中央には矯正線を通すための溝(スロット:図中のA)がついています。
この溝に、弾力に富んだ金属で作った矯正線を通すと、矯正線のばね作用によって歯に力がかかり歯の移動が生じます。
矯正線はブラケットのウィングとよばれる部分(図中のB)に、金属の細い紐(結紮線、リガチャーワイヤー)やゴムのリング(エラスティックモジュール)をくくりつけることで固定します。


ブラケット単体では歯を動かす力はありません。必ず矯正線とペアで使用する必要があります。

マルチブラケット装置は歯根に力を加えることで歯根の位置を変えたり、歯を平行移動させたりすることが可能な矯正装置です。
歯を3次元的に移動させる際に最も制約を受けないものが、このマルチブラケット装置です。他の装置はマルチブラケット装置とくらべて可能な移動が限られているか、もしくはマルチブラケット装置と組み合わせて使用することが前提となります。

そのため成人矯正や永久歯が生えそろった中学生以降の方の矯正で、本格的な治療が必要な方には欠かすことの出来ない装置となります。歯並びの状態によっては乳歯列期~混合歯列期(生え変わりの時期)にも一部の歯に使用することがあります。

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by yamawaki2527 | 2009-03-19 12:39 | 矯正治療の話  

どうして歯は動くの? (3)


c0193833_1257540.gif前回は歯に弱い力が加わると、歯根のまわりの骨に破骨細胞というものが集まることをお話しました。



c0193833_12592849.gif破骨細胞は、骨を食べることができる細胞です。この状態が長時間にわたって「常に」持続すると、歯根周辺の力のかかった骨が少しずつ吸収されて行きます。歯を移動させたい方向の骨が吸収されると、あとは矯正装置の力で歯自体が押されて(あるいは引っ張られて)移動します。


c0193833_12595176.gif歯が移動すると反対側に隙間が出来ますが、こちらは骨芽細胞がきちんと骨を作って埋めてくれますので、心配無用です。
「非常に弱い力」を「常に」与えてやると、このようなしくみで歯が移動するのです。


ちなみに、「強い力」を加えると破骨細胞は姿を消してしまいす。たまに患者さんから早く治療を進めたいので思いっきり力を強くして欲しいと希望されることがありますが、そのようにすると全くの逆効果をもたらしてしまいます。

体が持っている新陳代謝のペースに合わせて無理なく歯を移動させると、一番良い結果が得られます。

by yamawaki2527 | 2009-01-09 13:09 | 矯正治療の話  

どうして歯は動くの? (2)


前回は歯を動かすためには、「非常に弱い力」と「常に」という2つのキーワードが大切だということをお話しました。

この2つの条件が揃うと歯が動く理由をお話するためには、骨の新陳代謝のことを少しご説明しなければなりません。

人間の骨は、破骨細胞と骨芽細胞という2種類の細胞によって、常に作りかえられています。前者は骨を壊す役割を持ち、後者は骨を作る役割を持っています。これらの細胞のおかげで骨折が治ったり、環境変化に適応したり出来るのです。

c0193833_12134023.gif歯は、口の中で見えている部分(歯冠と言います)の約2倍近くの長さの根っこ(歯根と言います)があり、歯根は骨の中に埋まっています。大根が地面に埋まっている様子をイメージしてもらうと分かりやすいかも知れません。

歯根のまわりの骨も、破骨細胞と骨芽細胞によって新陳代謝が行われています。さて、ここで歯に「非常に弱い力」が加わると、不思議なことが起こります。歯にかかった弱い力は歯根を通して骨に伝わります。すると骨の中にある破骨細胞が増えて、歯根のまわりの力のかかった場所に集まり始めるのです。

つづく

by yamawaki2527 | 2009-01-08 12:21 | 矯正治療の話  

どうして歯は動くの? (1)


記念すべき第1回目は、このテーマで始めたいと思います。

矯正治療とは、矯正装置の力を使って自分の歯を移動させて、正しい位置へと並べることで、歯並びとかみ合わせを改善する治療法です。

ところで、歯が生えかわるときを除いて、普段の生活を送っていて歯並びが急速に変わって行くことはありませんよね?歯は一度完全に生えてしまうと、そう簡単に違う場所へ動いてしまうことはありません。

矯正治療では、歯に力を加えることで歯の位置を変えます。一方、歯というものは日常生活の中で大きな力を受けており、強く噛みしめたときには自分の体重ほどの力が奥歯にかかることもあります。これほどの環境下でも歯の位置は変わらないのに、どうして矯正治療では歯を動かすことができるのでしょうか。

その秘密を解く鍵は、歯に加える力の強さと持続時間に隠されています。「非常に弱い力」「常に」歯に対して加えてやると、不思議なことに歯を移動させることが出来るのです。
この2つのキーワードは、矯正治療を行う上で欠かすことができないものです。

つづく

リンク: 山脇矯正歯科 矯正治療とは

by yamawaki2527 | 2009-01-07 00:14 | 矯正治療の話