顎変形症とは
2009年 03月 05日
前回まで7回にわたり、不正咬合を原因別に解説してきました。
今回お話する顎変形症は少し毛色が異なっており、ある特徴を持ったかみ合わせから定義されるものではありません。
顎変形症とは、上下の顎骨の大きさや位置に著しい問題が存在し、矯正治療のみでは咬合を改善することができないものを指します。
顎変形症をご説明するために、まずは通常の下顎前突の写真を見ていただきます。
下の前歯が上の前歯よりも外側にありますが、前歯の付け根である歯肉付近を注目して下さい。
ここを見ると、上下のあごの骨の前後的な位置関係をある程度推測することができます。
歯だけを見ると下の歯列がずいぶん前にあるように見えますが、骨の位置を見るとさほど下あごが前方にあるわけではなさそうなことが分かります。
次に顎変形症の一つである骨格性下顎前突症の写真を見てみましょう。
前歯の付け根の歯肉を見てみると、下あごが大きく前に出ていることが分かると思います。
下あごの骨は大変固いため、下の前歯の根っこを前後に動かすことには大きな制約が存在します。土台となる骨の位置がこれだけずれている場合、矯正治療のみで上下の歯列を咬合させることは出来ないため、あごの骨の位置を治す外科手術を併用して矯正治療を行う必要があります。このような治療法を外科矯正と言います。
顎変形症には他にも、骨格の問題が大きくて矯正治療のみでは治療が出来ないような上顎前突、開咬、過蓋咬合などが含まれます。
あごの骨が横方向にずれて生じる交差咬合(昔は「交叉咬合」と表記)や、正面から見てあごが左右非対称に見える狭義の「顎変形症」は、矯正治療のみでは改善がほとんど期待できないため、これらも外科矯正の対象となることがあります。
顎変形症の治療は、矯正治療・外科手術ともに保険診療の対象となります。
ただし、矯正治療を行う歯科医院と外科手術を行う病院の両者が施設基準を満たし所定の手続きを行っている必要があります。
by yamawaki2527 | 2009-03-05 13:04 | 歯ならびの話